• 2022年4月11日

『亡国のハントレス』(ポーランド・ドイツ・アメリカ)

本書は、前作「戦場のアリス」(「ふぇみん紙」2019年7月25日号掲載)と同様、史実を忠実に織り込んだために生まれる臨場感が半端ではない壮大な歴史小説ミステリー…第二次大戦中、ナチスドイツ占領下のポーランドに「女(ハント)狩人(レス)」と呼ばれた殺人者がいた。森で人を狩り、ユダヤ人の子どもや兵士を殺した冷酷な親衛隊将校の愛人。戦争が終わり、「ニュルンベルク裁判」で、数百万人の殺害が暴かれる陰で、彼女は姿をくらまし…戦争に翻弄(ほんろう)された登場人物たちの過去と現在の物語が、最後に一つに収斂(しゅうれん)していく…

  • 2022年11月12日

「負けてたまるか、とたくましく生きてきたよ」/ 福岡・戦時中・炭住での「貧乏暮らし」~小谷瑞枝さんの語り / ムービー(日本/福岡)

小谷瑞枝さんは、刀川和也(「隣る人」工房)の母方の伯母です…福岡の炭鉱住宅で育った伯母。「貧乏暮らし」の記憶を歯に衣着せぬ物言いで語る伯母の姿が、20代に読んだ「青春の門・筑豊編」(著:五木寛之)に描かれていた登場人物たちの姿と重なり、炭鉱の世界が目の前に鮮明に広がっていきました…

  • 2022年6月1日

『マニラ戦』:「母、祖母、おじたちが、どこで、どのように殺されたのか…いまだに不明なままです」~ローデリック・ホールさんの語り / ムービー(フィリピン)

…米軍のマニラ侵攻が押し迫ってきた1945年1月20日、突然、銃剣を携えてやってきた日本兵がローデリック・ホールさんの自宅の家宅捜索を執拗に行い、ホールさんのおじが隠し持っていた短波ラジオを発見したのです。スパイの容疑がかけられ、ローデリック・ホールさん、すぐ下の弟、母親、祖母、おじ、家政婦等全員が日本軍の憲兵隊が接収していたフリーメーソン寺院に連行されました…ローデリック・ホールさんの母親、祖母、おじ等が収容されていたフリーメーソン寺院でも200名にも及ぶ市民が虐殺された…

  • 2022年11月12日

父の沈黙~「女に生まれればよかった」とだけ日記に書いた…(日本/栃木)

父はただ、「女に生まれればよかった」とだけ日記に書いた……「軍隊じゃ、そんな甘いことは言っていられないんだぞ。連帯責任で地べたに食い物をぶちまけられるんだ」…父はただ、自らの血脈に沁みこんだ「男たるもの」を生き続けた……稲塚由美子(「隣る人」工房)

  • 2022年11月12日

母の昭和史~「どうして何も気がつかずにいたんだろう。 それが悔しい。だけどね…」(日本/栃木)

母は言う。どうして何も気がつかずにいたんだろう。それが悔しい。だけどね……。母は、兄の戦死、嫁いびりや部落差別、障害者差別、女性差別、性暴力、老人の孤独を体験するたびに、人間の人間に対する不正、暴力的支配や抑圧に対する憤りというものを身体で感じていたのだと思う……稲塚由美子(「隣る人」工房)

  • 2022年4月11日

『血の葬送曲』(ロシア)

密告と粛清が横行し、誰も信じられないスターリン独裁期のソ連を舞台にした警察小説歴史ミステリー。人肉食まであったという悲惨なレニングラード包囲戦(現在のサンクトペテルブルク1941年9月~1944年1月/872日間)を背景に起こる8年後の事件が発端の、心震える物語…作中、通奏低音として常に音楽がある。包囲戦の中でショスタコーヴィチが「レニングラード交響曲第7番」を作曲し、それが社会的背景でも事件そのものでも大きな意味をもつことになる…