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ミステリーから世界を読む

ミステリー評論家でもある稲塚由美子(「隣る人」工房)が厳選した世界で出版されているミステリー小説の書評。

ある事件が起こる。その事件の背景には、登場人物たちが生きる社会状況や歴史が色濃く反映している。ミステリーを通して、わたしたちがいま生きる社会(世界)を読み解いていく。

 

  • 2022年12月5日

『窓辺の愛書家』(イギリス)

本書は、2020年MWA賞最優秀長編賞を受賞した『見知らぬ人』の続編で、素人探偵3人の捜査行に、海辺の街やスコットランドのブックフェアの様子が実に生き生きと織りこまれていて楽しい…現代イギリスの多様性社会を反映したような登場人物が、生き生きと謎解きに関わって活躍する本格謎解きミステリーである…

  • 2022年11月9日

『ボンベイのシャーロック』(インド・ウクライナ)

傷を負った主人公の眼を借りて、植民地時代のインドを活写する歴史小説としての読み応え十分な歴史冒険ミステリー。パールシー(ゾロアスター教徒)だという女性作家のデビュー作で、2021年エドガー賞最優秀新人賞候補作となった…人々の分断を深めたセポイの反乱、地方民族(藩王国)と英国の統治者の間で敵対させられるインド人の姿、パールシー、イスラムなど混在する宗教的背景、カースト、奴隷貿易などが丁寧にこの「冒険行」に織り込まれている…

  • 2022年10月7日

『偽りの眼』上・下(アメリカ)

舞台はジョージア州アトランタ。物語の主人公リー・コリアーは、大手弁護士事務所所属の弁護士である…明らかに猟奇的なレイプ犯を弁護し、被害女性たちを貶(おとし)めて無罪を勝ち取らなければ、リーはすべてを失うことになる…

  • 2022年8月5日

『過ちの雨が止む』(アメリカ・ウクライナ)

アメリカ発、バリー賞など三冠に輝いたアレン・エスケンスのデビュー作『償いの雪が降る』の続編が出た。今でいえば「ヤングケアラー」の若者が主人公の、青春成長小説ミステリー…物語は、AP通信社で記者として働くジョーが、ある日、ミネソタ州の田舎町バックリーで起きたジョー・タルバートという男の不審死を知って始まる…

  • 2022年8月5日

『壁の向こうへ続く道』(アメリカ・ベトナム)

…作者シャーリイ・ジャクスンは、「日常にひそむ狂気」がテーマのサスペンスミステリーを書き続け、40代で早世した。この作品は70数年前のデビュー作だが、初邦訳されたことになるが、悪意を静かにはらむ物語は決して古びていない…

  • 2022年8月4日

『塩の湿地に消えゆく前に』(アメリカ)

アメリカ発、女性作家ケイトリン・マレンのデビュー作にして、2021年エドガー賞最優秀新人賞受賞作…本書は、2006年に実際にあった事件―アトランティックシティのモーテル裏で女性四人の遺体が発見された事件を下敷きにしているという…