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ミステリーから世界を読む

ミステリー評論家でもある稲塚由美子(「隣る人」工房)が厳選した世界で出版されているミステリー小説の書評。

ある事件が起こる。その事件の背景には、登場人物たちが生きる社会状況や歴史が色濃く反映している。ミステリーを通して、わたしたちがいま生きる社会(世界)を読み解いていく。

 

  • 2025年10月19日

『夜を駆ける女たち』

本作は、全米を震撼させた30人以上の女性が殺害された実際の連続殺人事件(1974~1978年)を元に、女性の視点で現代社会の歪(ゆが)みを描いたサスペンス・ミステリー。社会にはびこる男性優位主義(マティズモ)に対抗して、女性がエンパワメントしていく過程が痛快…

  • 2025年10月3日

『スパイたちの遺灰』(イギリス)

本書は、イギリスを舞台に、暴かれまいとする勢力との心理戦を描くスパイ小説ミステリーである。作者は、大学院で諜報史を専攻した現在35歳の新鋭…アメリカCIA、イスラエルのモサド、ロシアKGBも入り乱れ、各国のスパイが暗躍する現場で、誰と誰が繋(つな)がり、どんな関係だったのか、という人間ドラマとしても非常に楽しめる…

  • 2025年8月2日

『グッド・シスター』(オーストラリア・日本・東京)

オーストラリア発、シングルマザーに育てられた双子の姉妹のそれぞれの語りが紡(つむ)ぐサスペンス・ミステリー。誰かがウソをついている。だが最後まで解き明かせない秀逸な心理劇で、本国オーストラリアのみならずアメリカでもベストセラーになったという…

  • 2025年7月26日

『17の鍵』(ドイツ)

ドイツ発、壁の崩壊後でも、徹底して東ドイツ市民を監視した秘密警察の残党が存在したとしたら…マルク・ラーベ作の本書は、刑事トム・バビロン・シリーズ第1作のサスペンス・ミステリー…

  • 2025年7月3日

『少年の君』(中国)

玖月晞(ジウ ユエ シー)著 泉京鹿 訳 1,265円(税込) 新潮文庫 中国発、米中関係を忖度しての軍事化拡大にいそしむ愚かな日本の大人たちをあざ笑うかのように、人間の愛おしさを描いた傑作華(か)文(ぶん)ミステリー。 社会の理不尽に苦しめられる思春期の少年少女の切ない恋愛と、人生を賭けた偽装工作 […]

  • 2025年6月8日

『報いのウィル』(アメリカ)

児童養護施設で育った経歴をもつ、ジョージア州特別捜査官〈ウィル・トレント〉シリーズの最新作。シリーズ初の、アガサ・クリスティーばり密室殺人サスペンス・ミステリー…