CATEGORY

ミステリーから世界を読む

ミステリー評論家でもある稲塚由美子(「隣る人」工房)が厳選した世界で出版されているミステリー小説の書評。

ある事件が起こる。その事件の背景には、登場人物たちが生きる社会状況や歴史が色濃く反映している。ミステリーを通して、わたしたちがいま生きる社会(世界)を読み解いていく。

 

  • 2025年8月2日

『グッド・シスター』(オーストラリア・日本・東京)

オーストラリア発、シングルマザーに育てられた双子の姉妹のそれぞれの語りが紡(つむ)ぐサスペンス・ミステリー。誰かがウソをついている。だが最後まで解き明かせない秀逸な心理劇で、本国オーストラリアのみならずアメリカでもベストセラーになったという…

  • 2025年7月26日

『17の鍵』(ドイツ)

ドイツ発、壁の崩壊後でも、徹底して東ドイツ市民を監視した秘密警察の残党が存在したとしたら…マルク・ラーベ作の本書は、刑事トム・バビロン・シリーズ第1作のサスペンス・ミステリー…

  • 2025年7月3日

『少年の君』(中国)

玖月晞(ジウ ユエ シー)著 泉京鹿 訳 1,265円(税込) 新潮文庫 中国発、米中関係を忖度しての軍事化拡大にいそしむ愚かな日本の大人たちをあざ笑うかのように、人間の愛おしさを描いた傑作華(か)文(ぶん)ミステリー。 社会の理不尽に苦しめられる思春期の少年少女の切ない恋愛と、人生を賭けた偽装工作 […]

  • 2025年6月8日

『報いのウィル』(アメリカ)

児童養護施設で育った経歴をもつ、ジョージア州特別捜査官〈ウィル・トレント〉シリーズの最新作。シリーズ初の、アガサ・クリスティーばり密室殺人サスペンス・ミステリー…

  • 2025年4月10日

「読書セラピスト」(イタリア・インド)

イタリア発、圧倒的な「本」への愛情にあふれた文学ミステリー。探偵役の主人公が、悩める人々に読むべき本を処方する「読書セラピスト」だという設定がまず面白い。イタリアのミステリー賞シェルバネンコ賞受賞作…

  • 2025年2月6日

『破砕』『破果』(韓国)

ミステリー界でも、日本翻訳ミステリー大賞を受賞した、老人で女性で殺し屋が主人公の異色サスペンス『破果(はか)』と、その前日譚(たん)『破砕(はさい)』は出色の出来。2冊同時に紹介…高齢であること、女性であることは日韓を問わず「弱み」のままだ。「高齢×女性」ならなおのこと。弱者に配慮をと言いながら、その一方で「生産性がない」「有用でない」と切り捨てる社会の眼差しは存在し…老いの孤独と生きる意味を考えさせる胸熱のミステリー…