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ミステリーから世界を読む

ミステリー評論家でもある稲塚由美子(「隣る人」工房)が厳選した世界で出版されているミステリー小説の書評。

ある事件が起こる。その事件の背景には、登場人物たちが生きる社会状況や歴史が色濃く反映している。ミステリーを通して、わたしたちがいま生きる社会(世界)を読み解いていく。

 

  • 2022年8月5日

『過ちの雨が止む』(アメリカ・ウクライナ)

アメリカ発、バリー賞など三冠に輝いたアレン・エスケンスのデビュー作『償いの雪が降る』の続編が出た。今でいえば「ヤングケアラー」の若者が主人公の、青春成長小説ミステリー…物語は、AP通信社で記者として働くジョーが、ある日、ミネソタ州の田舎町バックリーで起きたジョー・タルバートという男の不審死を知って始まる…

  • 2022年8月5日

『壁の向こうへ続く道』(アメリカ・ベトナム)

…作者シャーリイ・ジャクスンは、「日常にひそむ狂気」がテーマのサスペンスミステリーを書き続け、40代で早世した。この作品は70数年前のデビュー作だが、初邦訳されたことになるが、悪意を静かにはらむ物語は決して古びていない…

  • 2022年8月4日

『塩の湿地に消えゆく前に』(アメリカ)

アメリカ発、女性作家ケイトリン・マレンのデビュー作にして、2021年エドガー賞最優秀新人賞受賞作…本書は、2006年に実際にあった事件―アトランティックシティのモーテル裏で女性四人の遺体が発見された事件を下敷きにしているという…

  • 2022年6月29日

『噤みの家』(アメリカ)

…472日間にわたる壮絶な監禁事件の生還者フローラは、D・Dの「秘密情報提供者」になっていた。彼女は、事件の報道にショックを受ける。6年前の監禁中、被害者の男に会っていたことを思いだしたのだ。フローラを監禁してレイプした事件の犯人ジェイコブは、FBIによるフローラ救出作戦で死んでいるが、夫コンラッドは、誘拐犯ジェイコブと知り合いだった? だとしたら彼の正体は?…本書の魅力は、まず女性たちの人物造形にある…本書は「シスターフッド」の物語でもある。捜査する側も被害者も、愛憎ないまぜになって共感して助け合う、女性たちのお伽(とぎ)噺(ばなし)だ…

  • 2022年4月11日

『アリスが語らないことは』(アメリカ)

2019年度「このミステリがすごい!」(宝島社)で2位となった『そしてミランダを殺す』の作者、ピーター・スワンソンの新作。何が真実で、誰が嘘つきか、緊迫感あふれる心理サスペンス・ミステリーの傑作…人は、見たくないものは「ない」ものとして生きることがある。時には自分に対しても嘘をつく。それも過酷な人生を生き延びるためのぎりぎりのサバイバル術…

  • 2022年4月11日

『ゲストリスト』(イギリス)

イギリス発、2020年英国推理作家協会(CWA)賞ゴールド・ダガー賞候補作の本書は、アガサ・クリスティの名作『そして誰もいなくなった』を想起させる趣向の心理サスペンスミステリー…暴風雨に閉ざされた島での群像劇を、時系列を交錯させ巧みに描き、ラスト、過去の悪行がすべて顕(あら)わになり、すべての伏線がきれいにつながって…