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稲塚由美子

  • 2023年11月2日

その人はその人であるということ(日本/埼玉/ベトナム/フィリピン)

…人は、心理的にも身体的にも距離が近くなると、自分の都合のいいように人を動かそうとする。その人はその人であっていいはずなのに、管理しようとする。「この人はこういう人」とレッテルを貼り、「これはどうしたって、こうでなければならない」と決めつける。それが、「差別」や「偏見」の顕(あらわ)れなのだと自覚するのは、思う以上に難しい…

  • 2023年10月9日

『アオサギの娘』(アメリカ・フィリピン・日本)

『ザリガニの鳴くところ』(ディーリア・オーエンズ作、2020年、早川書房刊/We226号掲載)に続き、海と陸とを分かつ湿地に生きる女性を描いたサスペンス・ミステリーが翻訳された。本書は、大学で美術学修士号を取得したという作者のデビュー作…数々の危険を乗り越えて、父の死の真相を探り出す娘とその家族の再生を描いて秀逸だが、まず何より野生の鳥類や沼地の動植物についての詩的な描写がみずみずしく美しい…

  • 2023年10月9日

『ガーナに消えた男』(ガーナ)

ガーナ発、現実にも多発するインターネット詐欺を追う新米女性探偵の活躍を描く冒険ミステリー。2021年アメリカ私立探偵作家クラブ賞新人賞受賞作…ガーナがアフリカにおけるインターネット中心地だと聞いてもピンとこない人は多いと思う。しかし同地は、メールやショッピングサイト経由でのオンライン詐欺多発地である…

  • 2023年8月18日

『軋み』(アイスランド・ルワンダ)

1988年生まれの女性作家エヴァ・ビョルク・アイイスドッティルのデビュー作にして、英語版『The Creak on the Stairs』は2021年度CWA(英国推理作家協会)新人賞を受賞…彼女は子どもの頃にアークラネスに住み、酒浸りのシングルマザーに育てられ、この町を憎んでいたという。何が彼女をアークラネスに舞い戻らせたのか? なぜ殺されなければならなかったのか…

  • 2023年6月12日

『白夜に沈む死 』上・下(ノルウェー・スウェーデン・フィンランド)

日の沈まない夏の北極圏、北欧三国にまたがり活躍する特殊警察「トナカイ警察」の警察官コンビ、クレメットとニーナが事件を追う辺境警察ミステリー、シリーズ第二作…トナカイと生き、精霊を信仰するサーミの人々は、国策による開発や同化政策を進められ、古い歴史と新しい文明との利害の間、伝統と利権の間で引き裂かれる…