「新・国策」とそれを決定する主権者が担う責任
ハンセン病・沖縄の基地化拡大・水俣病・核兵器禁止条約、そして原発推進税……
奥間さんがDVDの中で指摘するように、ハンセン病と沖縄(琉球弧)の軍事基地拡大化という「国策」はまさに、直接に繋がっている〈日本独特の“国策思考”〉であり、この国の未来をも制しかねない政治的病巣であり続けることでしょう。


奥の筒形のキャニスターを搭載した車両が「12式地対艦誘導弾」車両: 宮古島 / 2013年7月撮影(左)
石垣島・人口ビーチ脇に2台設置されていたPAC3(地対空誘導弾パトリオットミサイル)発射台 / 2023年7月撮影
日本ではそのような「国策」によって、ハンセン病患者・回復者が、今なお途絶えない偏見と差別の犠牲になっていますが、それは〈本土を豊かにするために琉球弧での軍事化拡大を図る国策の歴史〉に繋がっています。
また、こうした歪んだ「国策」は水俣でも猛威を振るい、日本の環境政策への取り組みを今も腰が引けたものにし続ける原点となっています。
気候危機や自然エネルギーへの取り組み遅れも、原発増設計画という「国策」の“副作用”です。福島原発の事故にもかかわらず再び〈特別税の導入〉などによって計画が強化されようとしていることに、この国の主権者である私たちはそろそろ気づかなければなりません。
〈核兵器禁止条約を無視する国策〉も、唯一の被爆国でありながら日本が人類滅亡につながる核兵器廃絶のリーダーとなり、世界平和に貢献する役割と努力を放棄することによって、生き続けます。〈同条約の無視〉は私たち日本人への大きな侮辱であるにもかかわらず、日本政府自身が歪んだ「国策」を採り続け、ハンセン病対策と同根の『愚策』であることを顧みようともしていません。
それらの「国策」を断ち切る闘いは、これからも当分の間続くことになるでしょう。日本の国策に潜んでいる病巣は、法律を撤廃すれば消え去るといったものでは全くなく、これから2~3世代・1世紀をかけて撤去に取り組んで行く必要のある病巣なのですから。
最後に、DVD『奥間政則』のドキュメンタリーを観る機会をくださった奥間政則さんに、心から感謝を伝えたいと思います。
奥間さんは土木工学(Civil Engineering)の知見をもつ土木技師(Civil Engineer )です。英語表記が示すとおり、日本語の「土木」には「市民のための土木」という意味が込められています。奥間さんは「市民のための技術」を駆使して、さらに新しい人生/運動に取り組んでおられます。50歳を過ぎてさらに新たな道を進んでおられる後ろ姿を見ながら、『これほど奥間さんらしいことはない!』と、強い敬意を覚えています。
文 / 長坂寿久



■本文の註■
1)筆者が参加した沖縄ツアーはPARC(NPO法人「アジア太平洋資料センター」)主催の「PARC自由学校 アクション・ツアー2024~抵抗と連帯の現場へ~」。PARCは日本の政治・社会・経済問題についてとくに政府の政策を国際的な視野でウオッチしている、日本の中で最も古参で成果を上げてきた市民団体として信頼されている団体の一つ。毎年開校されている「自由学校」も充実している。今回のような「アクション・ツアー」も多く企画されており、沖縄アクション・ツアーも数年毎に開催されている。
2)本稿で論じた「日本のハンセン病への取り組み」に関する、歴史や展開等の事実情報は、基本的には「ハンセン病国賠弁護団」のサイトで基本的に確認した。そのため同団体資料などからの引用が多くなっている。この出所から「そのまま引用」(出所不記載)も散見されると思われるが、ご寛恕のほどお願い申し上げる。
★奥間政則さんのドキュメンタリーDVDは、個人視聴用には3000円(税込)、また上映権付き(複数で観る・勉強会で使用するなど、個人的上映会の開催が可能)では2万5千円(同)で購入できる。制作会社「隣る人工房」を検索されたい。また、奥間政則さんの講演招聘も歓迎される。全編106分、字幕付き。
★『ベン・ハー』および『砂の器』は、DVD購入・レンタル、あるいはWeb上映も可能。この2作品とも字数の関係から解説を割愛した。奥間政則さんのDVDも含めてぜひ一度ご覧になっていただきたい。