不朽の3作品を通して考える「ハンセン病とは何だったのか」~「国策としての差別」に翻弄された当事者の姿が問う日本人の理念(「福音と社会」Vol.338 / 2025年2月28日 号からの転載 ・文 / 長坂寿久)

「新・国策」とそれを決定する主権者が担う責任

ハンセン病・沖縄の基地化拡大・水俣病・核兵器禁止条約、そして原発推進税……

奥間さんがDVDの中で指摘するように、ハンセン病と沖縄(琉球弧)の軍事基地拡大化という「国策」はまさに、直接に繋がっている〈日本独特の“国策思考”〉であり、この国の未来をも制しかねない政治的病巣であり続けることでしょう。

石垣島・人口ビーチ脇に2台設置されていたPAC3(地対空誘導弾パトリオットミサイル)発射台 / 2023年7月撮影

日本ではそのような「国策」によって、ハンセン病患者・回復者が、今なお途絶えない偏見と差別の犠牲になっていますが、それは〈本土を豊かにするために琉球弧での軍事化拡大を図る国策の歴史〉に繋がっています。

また、こうした歪んだ「国策」は水俣でも猛威を振るい、日本の環境政策への取り組みを今も腰が引けたものにし続ける原点となっています。

気候危機や自然エネルギーへの取り組み遅れも、原発増設計画という「国策」の“副作用”です。福島原発の事故にもかかわらず再び〈特別税の導入〉などによって計画が強化されようとしていることに、この国の主権者である私たちはそろそろ気づかなければなりません。

〈核兵器禁止条約を無視する国策〉も、唯一の被爆国でありながら日本が人類滅亡につながる核兵器廃絶のリーダーとなり、世界平和に貢献する役割と努力を放棄することによって、生き続けます。〈同条約の無視〉は私たち日本人への大きな侮辱であるにもかかわらず、日本政府自身が歪んだ「国策」を採り続け、ハンセン病対策と同根の『愚策』であることを(かえり)みようともしていません。

それらの「国策」を断ち切る闘いは、これからも当分の間続くことになるでしょう。日本の国策に潜んでいる病巣は、法律を撤廃すれば消え去るといったものでは全くなく、これから2~3世代・1世紀をかけて撤去に取り組んで行く必要のある病巣なのですから。

 最後に、DVD『奥間政則』のドキュメンタリーを観る機会をくださった奥間政則さんに、心から感謝を伝えたいと思います。

奥間さんは土木工学(Civil Engineering)の知見をもつ土木技師(Civil Engineer )です。英語表記が示すとおり、日本語の「土木」には「市民のための土木」という意味が込められています。奥間さんは「市民のための技術」を駆使して、さらに新しい人生/運動に取り組んでおられます。50歳を過ぎてさらに新たな道を進んでおられる後ろ姿を見ながら、『これほど奥間さんらしいことはない!』と、強い敬意を覚えています。

文 / 長坂寿久

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