• 2025年6月22日

『マニラ戦』:「母、祖母、おじたちが、どこで、どのように殺されたのか…いまだに不明なままです」~ローデリック・ホールさんの語り (フィリピン)

…米軍のマニラ侵攻が押し迫ってきた1945年1月20日、突然、銃剣を携えてやってきた日本兵がローデリック・ホールさんの自宅の家宅捜索を執拗に行い、ホールさんのおじが隠し持っていた短波ラジオを発見したのです。スパイの容疑がかけられ、ローデリック・ホールさん、すぐ下の弟、母親、祖母、おじ、家政婦等全員が日本軍の憲兵隊が接収していたフリーメーソン寺院に連行されました…ローデリック・ホールさんの母親、祖母、おじ等が収容されていたフリーメーソン寺院でも200名にも及ぶ市民が虐殺された…

  • 2022年11月12日

父の沈黙~「女に生まれればよかった」とだけ日記に書いた…(日本/栃木)

父はただ、「女に生まれればよかった」とだけ日記に書いた……「軍隊じゃ、そんな甘いことは言っていられないんだぞ。連帯責任で地べたに食い物をぶちまけられるんだ」…父はただ、自らの血脈に沁みこんだ「男たるもの」を生き続けた……稲塚由美子(「隣る人」工房)

  • 2022年11月12日

母の昭和史~「どうして何も気がつかずにいたんだろう。 それが悔しい。だけどね…」(日本/栃木)

母は言う。どうして何も気がつかずにいたんだろう。それが悔しい。だけどね……。母は、兄の戦死、嫁いびりや部落差別、障害者差別、女性差別、性暴力、老人の孤独を体験するたびに、人間の人間に対する不正、暴力的支配や抑圧に対する憤りというものを身体で感じていたのだと思う……稲塚由美子(「隣る人」工房)

  • 2022年4月11日

『血の葬送曲』(ロシア)

密告と粛清が横行し、誰も信じられないスターリン独裁期のソ連を舞台にした警察小説歴史ミステリー。人肉食まであったという悲惨なレニングラード包囲戦(現在のサンクトペテルブルク1941年9月~1944年1月/872日間)を背景に起こる8年後の事件が発端の、心震える物語…作中、通奏低音として常に音楽がある。包囲戦の中でショスタコーヴィチが「レニングラード交響曲第7番」を作曲し、それが社会的背景でも事件そのものでも大きな意味をもつことになる…

  • 2025年6月22日

『マニラ戦』:「女性たちだけが”ベイビューホテル”に連れて行かれたんです」~イサベル・カロ・ウィルソンさんの記憶・証言(フィリピン)

性暴力、性被害の証言を聴くことは特に難しい、といいます。。その記憶を心の奥底から引き出すことの苦痛は耐えがたいものであり、また、それはスティグマともなる可能性もあって告発することさえ簡単なことではないのです…イサベルさんは、元駐スペイン・フィリピン大使でもあった方ですので、様々なことを考慮して、話せること、話せないことを取捨選択しながらのお話だったと思います…

  • 2022年3月22日

『P分署捜査班 誘拐』(イタリア)

イタリア発、陽気で美しい街にしか見えないナポリを蝕む現代の「孤独」が胸を打つ、警察小説ミステリー。〈P分署捜査班シリーズ〉の第二作である。…老人の孤独や格差社会に加えて、ロマ、移民への偏見なども織りこみ、イタリアの国内事情をも照らし出す。謎解きの面白さと、登場人物ひとりひとりの人生あり、といった群像劇としての面白さ…