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ミステリーから世界を読む

  • 2022年4月11日

『亡国のハントレス』(ポーランド・ドイツ・アメリカ)

本書は、前作「戦場のアリス」(「ふぇみん紙」2019年7月25日号掲載)と同様、史実を忠実に織り込んだために生まれる臨場感が半端ではない壮大な歴史小説ミステリー…第二次大戦中、ナチスドイツ占領下のポーランドに「女(ハント)狩人(レス)」と呼ばれた殺人者がいた。森で人を狩り、ユダヤ人の子どもや兵士を殺した冷酷な親衛隊将校の愛人。戦争が終わり、「ニュルンベルク裁判」で、数百万人の殺害が暴かれる陰で、彼女は姿をくらまし…戦争に翻弄(ほんろう)された登場人物たちの過去と現在の物語が、最後に一つに収斂(しゅうれん)していく…

  • 2022年4月11日

『血の葬送曲』(ロシア)

密告と粛清が横行し、誰も信じられないスターリン独裁期のソ連を舞台にした警察小説歴史ミステリー。人肉食まであったという悲惨なレニングラード包囲戦(現在のサンクトペテルブルク1941年9月~1944年1月/872日間)を背景に起こる8年後の事件が発端の、心震える物語…作中、通奏低音として常に音楽がある。包囲戦の中でショスタコーヴィチが「レニングラード交響曲第7番」を作曲し、それが社会的背景でも事件そのものでも大きな意味をもつことになる…

  • 2022年3月22日

『P分署捜査班 誘拐』(イタリア)

イタリア発、陽気で美しい街にしか見えないナポリを蝕む現代の「孤独」が胸を打つ、警察小説ミステリー。〈P分署捜査班シリーズ〉の第二作である。…老人の孤独や格差社会に加えて、ロマ、移民への偏見なども織りこみ、イタリアの国内事情をも照らし出す。謎解きの面白さと、登場人物ひとりひとりの人生あり、といった群像劇としての面白さ…

  • 2022年3月22日

『誕生日パーティー』(オーストリア・カンボジア・アメリカ)

1970年代のカンボジア、ポル・ポト率いるクメール・ルージュ(カンボジア共産党)による大虐殺を逃れ、オーストリアにたどり着いたカンボジア難民の、ある秘密をめぐる心理サスペンス・ミステリー。前作『国語教師』で、ドイツ推理作家協会賞を受賞した女性作家タシュラーの最新作…作者の祖国オーストリアは、かつてナチス政権に与(くみ)した。クメール・ルージュを描きながら、作者は自国の歴史認識に対する闇をも暗示する…

  • 2022年3月22日

『レストラン「ドイツ亭」』(ドイツ・ポーランド)

ドイツ発、ドイツ人自身によるナチスの戦争犯罪を裁いた「フランクフルト・アウシュビッツ裁判」(1963年12月~65年8月)を描いたサスペンス・ミステリー。女性作家ヘスの長篇第一作…ナチスの残虐行為に初めてドイツ国民全体で向き合った。過去の忘却を阻止し、ドイツの歴史認識の転換点となった…

  • 2022年3月22日

『ブート・バザールの少年探偵』(インド)

初のインド発ミステリーを紹介したい。しかも、たった今(2021年4月29日)、本書が、アメリカ探偵作家クラブ賞(エドガー賞)最優秀長篇賞を受賞したと知らせが届いた…何よりインド人自身が認めたがらない、もしくはないものとしたいインド社会の格差と残酷さを映し出していた…