『完璧な家族』/ 小学館文庫・巻末解説より掲載(アメリカ)

こんなにも「揺るぎない誰か」を求める

           寄る辺なき子らの切なさに涙せよ

稲塚由美子

リサ・ガードナー著

満園真木 訳

小学館文庫 1200円+税

ニューヨークタイムズ紙ベストセラーリスト常連の大人気シリーズの新作にして、監禁小説の傑作『棺の女』の続編がついに登場した。

事件は、完璧な秋の日にとつぜん起こる。ある幸せそうな一家が何者かに銃撃されたのだ。13歳の次女ローラと8歳の長男マニー、母親とその恋人は、一瞬にして命を奪われた。

ボストン市警の部長刑事D・D・ウォレンに呼び出しがかかる。5歳の子どもをもつ母でもあるD・Dは、子どもが犠牲になったとはDV案件か、と胸を痛めながら現場に駆けつけた。そこで見たのは、弟に覆いかぶさるように死んでいるローラの姿だった。まるで処刑のような殺害現場に、D・Dは殺人者の異様な意思を感じるのだった。

16歳の長女ロクシーが二匹の犬とともに姿を消していた。なぜ帰宅しない? 近隣への聞き込みにより、銃声の通報より30分以上も前に、ロクシーはバックパックを背負って二匹の犬を連れ出したと判明する。果たして一家を襲ったのはロクシーなのか、彼女はどこにいる? 警察はアンバーアラート(緊急事態警報)を出し、ソーシャルメディアも駆使してロクシーの行方を必死に追う……。

さらにもう一人――472日間にわたる壮絶な監禁事件から生還した女性フローラ・デイン(『棺の女』に登場)もまた、過去の記憶のフラッシュバックに悩まされながら、ロクシーを見つけ出そうとしていた。フローラは、(ひそ)かに、監禁・誘拐・強姦(ごうかん)・DV被害者の女性を守る自警団を自負するようになっていたのだ。被害者から依頼されることもあれば、今回のように、頼まれなくても放っておけない、と自ら動き出すこともある。当事者だけが感応するというのだ。

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